炬燵の中でゲーム三昧

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大正×対称アリス all in one その4(episode 2 グレーテル編)

 『大正×対称アリス all in one』の続き。

 

大正×対称アリス all in one - Switch

大正×対称アリス all in one - Switch

  • 発売日: 2019/04/18
  • メディア: Video Game
 

 

※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 姉弟設定かつ監禁ものという前情報は持っていたけれど、いざ初手から監禁されると、おおう、となります。ここまでの登場人物の中で、飛び抜けて病んでいる感じがひしひしと。ただ、それ以上に、ありすが病んでいるように見えます。ありすとグレーテルが一種の共依存?のような関係に見えるとでもいうのでしょうか。ただ、精神的な依存だけでなく、ガチな薬物依存は想像していなかったです。

 

 ありす(と猟師)に関する劣等感が、血が繋がっていないことの劣等感に、やがて姉弟としての関係性と男女としての関係性の間での葛藤に、これまでの経緯を考えると、グレーテルは完全にありすと有栖家の被害者では、と思わないでもなかったり。養子という微妙な立場の人間の世話を異性である姉に任せきりにするというのは無責任がすぎるし、その姉がまた弟をドロドロに甘やかしつつ恋愛感情を向けているという、阿鼻叫喚な絵図ですね……。グレーテルが不良をぼこぼこにするところ、グレーテルの歪みが端的に表れていて好きなシーンなのですが、同時に彼の葛藤が見えてやり切れなくもあります。グレーテルの葛藤を知ったあとにありすとの共同生活を見直すと、色々思うところがあるというか、ヒヤヒヤするというか、グレーテル本人も言っていたけど、まさに天国でもあり地獄でもある生活だなぁと。

 

 ストーリーとしては、姉弟という関係性を守り心中するバッドエンドも物語として美しくて好きだけれど、生き延びて、恋人という関係性を築くエンドでは、お互いの依存が今後も影を落としそうで闇が深いのがそれはそれで良いな、と。グレーテルについては、猟師との会話のシーンからある程度自立の望みがあるけれど、ありすの方はこのままグレーテルに依存して生きていきそうなのが怖い。個人的にはグッドエンドがあまりグッドエンドに見えないのですよね。ありすの関わっていない、グレーテルと猟師との二人きりの語らいの場面がこのルートで一番穏やかなシーンだったのがなんとも言えない闇深さを感じます

 

 世界観については、魔法使いの、「僕は万能ではない、大まかな流れと、向かうべき結末しか知らない」というのセリフがかなり重要な気がします。魔法使いが自身を駒というからにはそれを使う誰かがいるわけで、それがありす、あるいはアリスということでしょうか。鏡の国自体が、ありすが王子様を救うための舞台装置のようになっているけれど、魔法使いはその舞台装置の歯車で、ありすが王子様を救うよう物語の軌道修正をする(バッドエンドの度に表れてループさせる)の魔法使いの役目ということなのかな。そうすると魔法使い編ってどんな物語になるのでしょうね。ありすが王子を救う舞台装置という、今見えている物語の根幹がそのままひっくり返って、ありすを救う、ありす自身に向き合わせるための舞台装置だった、というのが真相だと面白いなぁなど考えつつ。そもそも王子を救う物語と謳いつつ、ありす自身が好きな男に対して依存している状態に見えます。「好きな相手が幸せになるのならば、自分はそこにいなくていい」と聞けば耳障りはいいけれど、それって相手に対する究極の依存ですよね。相手に対する依存というより相手を救うというその行為そのものに対する依存、あるいはその両方かもしれませんが。シンデレラ、赤ずきん、かぐやのルートでは、その依存が相手を救う方向に正しく(?)向いたから問題が表面化しなかっただけで、グレーテル編では、グレーテルのありすへの依存を招いており、ありす自身の異常性として表面化しているように思います。このありす自身の問題がどう回収されるかは楽しみです。

 

 それにしても、これまでの誰のルートよりも性的な表現が強かったですね。しかもグレーテル編については、元々の PC 版と比較してマイルドになった結果だとか……。恋愛感情と不可分な性的欲望、というのがおそらくこのルートのテーマの一つだと思うので、このルートに限って言えば、性的な表現も気になりませんでしたが。姉に対する崇拝にも似た憧憬と、性的欲望の付随する恋愛感情という、相反する感情を同時に抱え込んでいるというのはなかなかにエグいです。美しく賢い、崇拝する姉との絆を宝物とする一方、その宝物を穢す感情を同時に内包しているという。自分が深く、深く抑え込んでいる欲望にずかずかと足を踏み入れ、嘲る周囲の人々ももちろんですけど、その欲望を何より掻き立てるのが、恋愛感情を抱いて彼に接し、振る舞う、崇拝する姉自身なのだからたまらないですよね。

 

 監禁という設定上、ありすとグレーテル以外のキャラクター間のやり取りが少なかったのは残念だけれど、赤ずきんが普通に有能な警察官になっていて、赤ずきん編とのギャップに驚いたり。猟師については、グレーテルの薬を管理している辺り、医者が濃厚になってきたかな。

 

 CG やシーンの回収がやや複雑ですけど、かぐや編の難易度が飛び抜けて高いため、グレーテル編は比較的楽にコンプリート。シンデレラ、赤ずきん、かぐや、グレーテルと、episode 1、2 のキャラクターを全てクリアした時点でやっと episode 3 の白雪編が開放されました。魔法使い編はまだ開放されないみたいですね。白雪編クリアで開放されるのでしょうか。白雪編と魔法使い編は、これまでとはまた違った位置づけになるようですね。それにしても、episode 1 の時点で人を選ぶとは思っていたもののの、episode 2 でさらにそれが強くなるとは……。episode 1 の雰囲気が好きでそのまま episode 2 を買って地雷踏み抜いた人多いんじゃないでしょうか。