炬燵の中でゲーム三昧

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大正×対称アリス all in one 感想

大正×対称アリス all in one』(PC(分作) / PS Vita / Nintendo Switch
Primura(PC)、PROTOTYPE(PS Vita / Nintendo Switch) 

大正×対称アリス all in one - Switch

大正×対称アリス all in one - Switch

  • 発売日: 2019/04/18
  • メディア: Video Game
 

 

- 総評:★★★★ 4.0

- シナリオ:★★★★ 4.0
- キャラクター:★★★★☆ 4.5
- グラフィック:★★★☆ 3.5
- 音楽:★★★★ 4.0
- システム:★★★★★ 5.0

良かった点
丁寧に作り込まれたシナリオ、個性的で魅力あるキャラクター

悪かった点
主人公の癖が強い、テンポが悪い

作品紹介

 『大正×対称アリス』は 2015 年に Primura により発売された全 4 巻の PC 用アドベンチャーゲームで、今回プレイした『大正×対称アリス all in one』は PROTOTYPE により、全 4 巻を 1 つのパッケージとしてまとめた Nintendo Switch 移植版(2019 年発売)です。ジャンルは「夢見るおとぎ話アドベンチャー」、選択肢によって分岐していく、シンプルなノベルアドベンチャーゲームです。シナリオは藤文さん、イラストはめろさんが担当されているようです。Switch 移植前に 2016 年に PS Vita にも移植されていますが、Switch 版では、Vita 版から新規 CG とビジュアルノベルが追加されているようですね。キャストは、
- シンデレラ:平川大輔
- 赤ずきん前野智昭
- かぐや:増田俊樹
- グレーテル:江口拓也
- 白雪:蒼井翔太
- 魔法使い:羽多野渉
- アリス:松岡禎丞
- 猟師:橋詰知久
- オオカミ:花江夏樹

 以下、ネタバレには配慮していますが、事前情報が少ない方が楽しめるゲームだと思いますので、気になる方はご注意下さい(同時にとても人を選ぶゲームでもあるので厄介なのですけどね……)。

丁寧に作り込まれた物語

 鏡を通り抜けて鏡の国に辿り着いた主人公「ありす」は、性別が反転した童話の登場人物と出会い、歪な物語を紡いでいきます。攻略対象たちは、全員心に何かしらの傷を抱えていて、ありすはそんな彼らの心を理解しつつ、徐々に距離を縮めていくことに。攻略対象はシンデレラ、赤ずきん、かぐや、グレーテル、白雪、魔法使い、アリスの 7 名ですが、共通ルートはなく、各キャラクターの攻略順には制限がかけられています。各ルートでは、登場人物は同じですが、登場人物同士の関係性が異なるので、毎回新鮮な気持ちでプレイすることができました。どの登場人物も個性があって、登場人物同士の掛け合いが非常に楽しいです。このゲームの最大の特徴として、各ルートが 1 つの物語としてつながっているので、最後までプレイする、しない、によって大きく印象が異なってくると思います。はじめは、鏡の国という見知らぬ世界に放り込まれ、右も左も分からないまま、攻略対象を個別を攻略していきますが、だんだんと世界観全体が見えてきて、各ルートの物語が 1 つの大きな物語として集約していくのは圧巻です。その物語自体も非常に丁寧に作り込まれており、各所に散りばめられた伏線も回収されるので、あとから「ああ、あれはこういうことだったのか」と思い返すこともしばしば。本作品については、お姫様が王子様を救う物語だとか、カウンセリングゲームだとか言われていますが、まさにその通りで、どのルートにおいても、ありすが攻略対象の心の傷を深く理解し、受け入れ、結ばれる過程が丁寧に描かれています。その分、乙女ゲームとして、恋愛をしている感を求めると肩透かしを食らうかもしれません。

 また、その物語を引き立てるのに一役買っているのが音楽。BGM は鏡の国というおとぎ話の世界観に非常にマッチしていましたし、OP、ED も非常に高クオリティでした。OP は公式サイトから確認可能なので、OP だけでも一見の価値ありだと思います。

快適なシステム

 久しぶりにノベルゲームをプレイしましたが、既読早送り、選択肢スキップ、オート再生など、ノベルゲームに必要な機能はもちろん、オート再生速度なども細かく設定が可能で、非常に快適にプレイできました。また、オート再生中は switch の画面を OFF にしないようにする設定もあり、これが非常に重宝しました。他にも、文字のフォントが変えられたり、文章の既読部分の色が変更できたりと、細かい部分まで至れり尽くせりで、逆に何が出来ないのかと思うほど。キャラクターの好感度は可視化されないので攻略は手探りになりますが、分岐自体それほど多くないため、快適なシステムも相まってストレスなくプレイできました。主人公の名前はデフォルトで「百合花」、デフォルト名でプレイすると名前部分もボイスが付くので、気になる方はデフォルト名でプレイされるのがいいかと思います。

人を選ぶ要素

 まず、この作品は主人公ありすの癖が非常に強いです。ときどき英語混じりで話す口調がかなり独特で、人によっては鼻に付き、受け入れがたいかもしれません。加えて、性格のアクも強く、自分の目的達成に貪欲で、相手の心の内に踏み込むために駆け引きを行うなど、どちらかというと腹黒系の性格かなと思います。個人的には、そんなありすと登場人物たちの軽快なやり取りが非常に楽しめました。

 また、物語の根幹に関わってくる部分になりますが、登場人物たちの心の傷と向き合っていくことになるので、テーマとしてはどうしても重くなりがちです。しかも、抱えている心の傷が、結構生々しく、根が深いものばかりなので、そういった要素は苦手な人はつらいかと思います(私見ですが、人によって地雷になる要素もそこそこあるように思います)。さらに、先述の通り、それぞれの物語が繋がって一つの大きな物語を構成しているため、このゲームの良さを知るには、最後までプレイする必要がある、というのも人を選ぶ要因かと思います(言い換えると、このゲームが合うか、合わないかもゲームを最後までプレイしないと分からないということですからね)。元々ライターの藤文さんのシナリオ自体、人を選ぶようですね。私は未プレイですが「死神と少女」も担当されているようなので、既プレイの方は参考にするとよいかもしれません。

個人的に気になった点

 このゲーム、テンポが全体的に悪いと思います。ゲーム開始直後、プロローグとして、主人公ありすが黒い、謎の空間に放り込まれ、アリスと出会い、鏡の国に辿り着くまでの過程が描かれるのですが、この間が非常に長いのです。おそらく時間としては 10 分程度なのですが、物語の右も左も分からない状態で、物語の進展もないままに、ありすとアリスのやり取りがひたすら続くので、正直退屈です(アリスのキャラクター自体は非常に面白く、声優である松岡禎丞さんによる演技も秀逸なのでそこは良いのですが……)。顕著なのはプロローグとエピローグですが、その二つが特筆してテンポが悪く、個人的には苦手でした。ノベルゲームという特性上ある程度は仕方がないかもしれませんが、特にゲーム序盤は、プレイヤーを物語にどれだけ引き込めるか、という重要な部分なので、ここでプレイを諦める人もいるのではないかと思うと、非常にもったいと思います。

 また、このゲーム、めろさんによる登場人物の立ち絵は非常に美麗で大好きなのですが、スチルのクオリティの差が大きいと言うか……。人物が正面から描かれているものはそれほど気にならなかったのですが、別の角度だったり、動きのある構図だったりすると、うーん?と違和感が拭えず。個人的なわがままになるかもしれませんが、立ち絵がきれいだっただけに、残念だなと思ったポイントです。

 あと、ちょこちょこ下ネタが入るのが、個人的に気になりました。下ネタ自体は別にいいのですが、恋愛の過程でとか、そういった甘い雰囲気の中でとかでなく、何気ない日常会話の中でさらっと下ネタが挟まれるので、うーんと唸ることがしばしば。下品とまではいかないので、気にならない人は気にならないのでしょうが、一応。

まとめ

 人を選ぶ要素が多く、最後までプレイしないとゲームの良さが十分に味わえないので、人に進めにくい作品なのは否めませんが、個人的には非常に楽しめました。先述の通り、シナリオが丁寧に作られており、おとぎ話をモチーフにした物語としても秀逸なので、シナリオ重視の方は一考の価値ありだと思います。一癖も二癖もある登場人物ばかりですが、全員個性的で、登場人物同士のやり取りも非常に楽しいです。

 

※ 以下、ネタバレありの個人的な感想です。

 

プレイ後感想(ネタバレあり)

 このゲームをプレイしての第一の感想は、攻略してきたキャラクターたちがすべて多重人格のアリステアが作り上げた交代人格だったという、いや、恋愛アドベンチャーでもある(ありますよね?)このゲームでこの設定はありなのか、というものでした。ネタバレなしの感想では掛けませんでしたが、ここが最も人を選ぶ部分だと思います。主人公が攻略対象と恋愛するという恋愛アドベンチャーゲームの根幹を覆しかねない設定ですよね……。個人的には、十分ありでしたが。

 物語の結末も、それぞれの人格が消えることなく、アリステアの中で、それぞれのヒロイン(ありす)と幸せを築いていくという、この設定の中で考えうる最良かなと思える大団円だったので、物語の重さに反して、スッキリとした読後感でした。多重人格(解離性同一性障害)の現実的な治療を考えた場合に良い結果かどうかというのは分かりませんし、物語を紡いでいくことに失敗し殺されていった「ありす」の人格たちのことを考えると思うところはないではないですが。

 おとぎ話をモチーフとし、鏡の国というファンタジーの世界を舞台にしながらも、解離性同一性障害と、それを利用した人格の生成という、世界観、物語として現実にありえそう(と思わせる)な筋が設定されていたのも、個人的には好きでした。

【攻略順】
シンデレラ→赤ずきん→かぐや→グレーテル→白雪→魔法使い→アリス

【好きなキャラ】
プレイ前
赤ずきん、白雪>かぐや、グレーテル>他
プレイ後
かぐや、アリス>グレーテル、赤ずきん>白雪>魔法使い>シンデレラ
(かぐやは個別ルートのシナリオが、アリスは口達者で毒舌なキャラが好きです)