炬燵の中でゲーム三昧

ゲームのプレイ雑記やあれこれ

片恋いコントラスト その1 (第一巻 椎葉・樫永ルート)

 Switch 版『片恋いコントラスト collection of branch』をプレイし始めました。先日クリアした「蛇香のライラ」つながりで、オトメイトの triAngle PROJECT 三作品のうちの一作ということでプレイ。ゲームでも漫画でも小説でも、普段あまり学園ものに手を出すことがなく、たまには悪くないかなぁと軽い気持ちでプレイし始めましたが、想像以上にかなり良かったです。

イラストは何世代か前の少女漫画を思わせるような感じ(自分は「ママレード・ボーイ」とかを思い出しました)で、その辺りの年代を狙い撃ちしているのかな?けれど、古さを感じさせる絵という訳ではなく、程よく現代っぽい絵になっていて、立ち絵はきれいで好きです。ただ、スチルが若干崩れているように感じたのが残念。シナリオも古き良き少女漫画という感じで、予想外な展開とか驚きとかは全くないですが、思春期特有の心の揺れとか不安定さが丁寧に描写されていて、それが滅茶苦茶良かったです

 恋愛アドベンチャーゲームとしては、攻略対象ごとの個別ルートがないのが珍しい気がしますね。とは言え、各キャラクターの描写が薄いという訳ではないです。「片恋いコントラスト」は元々 PC で全三巻で販売されていたものが合わさって Switch 版に移植されているものです。各巻ごとに攻略対象が二人いて、シナリオとしては、初恋編(攻略対象 A メイン)、傷恋編(攻略対象 B メイン)を経て、三角関係編で決着が付くという構成となっており、攻略対象のどちらと結ばれるとしてもシナリオの大筋は変わらないのですが、そこに至るまでの主人公の感情の動きが違ってくるので、物足りなさとかは感じなかったです。むしろ、その二人の攻略対象との関係で揺れる三角関係がシナリオの主軸になっているので、コンセプトとマッチしていて楽しめています。主人公と攻略対象たちに共通して、名字に樹木を表す漢字が含まれていて、タイトル(そして本編で語られる)の運命の branch(枝分かれ)と関連付けられていて、細かいところだけどこういうこだわり(?)は好きです。ただ、純粋にシナリオのボリュームが少なめなのと、特定の攻略対象とがっつり絡んでいるところが見たい場合には作品のコンセプト自体合わないかなと思います。

 第一巻は、クラスメイトの椎葉君同級生の樫永君が攻略対象かつ二人が幼馴染同士で、幼馴染の間に主人公が挟まるという設定だけで面白い。

 

片恋いコントラスト -collection of branch - Switch

片恋いコントラスト -collection of branch - Switch

  • 発売日: 2019/08/22
  • メディア: Video Game
 

 

 ※ 以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

椎葉亜樹那

 いつも変なお菓子(焼きナス味のソフトキャンディとか)を勧めてくる、良くも悪くも自分を偽らず、思ったことを言葉にし、行動にする変人という第一印象に反し、滅茶苦茶面倒くさい人でした。他人との付き合いを避けようとする主人公冴子に対しても気にせず接し友人関係に。はじめは椎葉君のことを疎ましく思っていた冴子が、親しい友人として、恋する相手として、だんだんと椎葉君に対する気持ちが変化していく過程がとても丁寧に描かれていて良かったです。なまじ友人関係から始まった恋だけに、今の関係性を崩したくない、自分の恋心を認めたくないと悩むところがもう甘酸っぱくて好きでした。結局自分の気持ちが抑えきれず椎葉君に告白する冴子ですが、椎葉君は過去への悔恨に囚われ自分はふさわしくないと振ってしまいます。しかも、事もあろうに幼馴染の樫永君とお似合いだと応援し出す始末。この辺りが最高に面倒臭くてもどかしいんですけど、思春期らしいままならなさがたまらないです。椎葉君エンドでは、吹っ切れ通り越してプロポーズされることになりますが、自分を偽らない本来の椎葉君らしいエンドで良かったなぁと思います(でも、振った相手が体調不良で眠っている隙にキスするシーンはちょっとどうかと思うんだ……)。

樫永和兎

 ルックスが良くて誰にでも優しい王子様と持て囃される樫永君ですが、その実、他人に嫌われるのが怖くて八方美人なだけという、とても人間くさくて好きなキャラクターです。そんな風に生きてきたからこそ、冴子と同じくらい、あるいはそれ以上に自分の気持ちに対して鈍感で、冴子に惹かれている気持ちを自覚しないまま、椎葉君へのあてつけという名目で冴子に近づいている不器用さが良かったり。周囲と上手く折り合い付けて器用に生きているように見えて、自分はヤキモチを妬いているのかな?って冴子に聞いちゃうシーンとか好きです。冴子も、はじめは椎葉君への恋心を忘れるために樫永君と仲良くしていたはずが、段々と樫永君自身のことを知って、惹かれていくのが良いです。冴子が優柔不断だとか気が多いとかいう訳ではなくて、攻略対象二人と接するそれぞれの状況で、それぞれの人格が見えてきて、それぞれにちゃんと惹かれる部分があるのが伝わってくるので、最後の三角関係編も納得というか、そりゃあ恋もするわと思えるくらい二人とも良い奴なのもそうなんですが、そこに至る冴子自身の気持ちもしっかり描写されていて良いです。冴子が椎葉君と樫永君との関係の中で成長していったように、樫永君も冴子と関係の中で成長していっているのも良かったです。最初誰に対しても良い顔をしていた樫永君が、冴子への気持ちを自覚してからは、興味がない相手に対してばっさり対応するようになっていたりして。樫永君も樫永君で、椎葉君との間のわだかまりがなくなると、自分はふさわしくないとか言って自ら引いてしまうので、なかなかに面倒くさい(けれどそれが良い)けど、樫永君エンドでは無事結ばれて良かったです。

総評

 少女漫画らしい少女漫画ってそれほど好きじゃないし、ライラが合わなかったのもあって、プレイ前の期待値はかなり低かったのですが、いや、すみません、滅茶苦茶良かったです。とにかく恋愛の過程や心理描写が丁寧で、主人公にも攻略対象にもすごく感情移入してしまいました。とりあえず、プレイ前のキャラクター印象をメモ。

プレイ前
桐阪、樫永>楡居>椎葉、楠見>檜渡

 今回の攻略対象は、まっすぐな椎葉君とちょっとひねくれた樫永君で、一見正反対のように見えて根っこにある部分が似ているというか。どちらの生き方が正解とかそういうのは全くないのに、幼馴染でなまじ相手のことを知っているだけに、自分の良いところよりも相手の良いところばかりが目に入ってしまって、自分よりも相手の方が冴子を幸せにしてやれるという思考に陥っちゃう。プレイしている側からすると、そうじゃないと言ってやりたくなるようなもどかしさ、ままならなさがあるんだけど、そういう思春期らしい不安定さがたまらない作品でした。過去形で書いてしまったけど、残りの第二巻、第三巻もプレイするのが楽しみです。

 

【プレイ時間】
序章:30 分
初恋編:2 時間 30 分
傷恋編:2 時間 20 分
三角関係編:1 時間