炬燵の中でゲーム三昧

ゲームのプレイ雑記やあれこれ

DETROIT: BECOME HUMAN 感想

DETROIT: BECOME HUMAN』(PS4 / PC (Steam, Epic Games))
ソニー・インタラクティブエンタテインメント  

【PS4】Detroit: Become Human Value Selection

【PS4】Detroit: Become Human Value Selection

  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: Video Game
 

 

- 総評:★★★★ 4.0

- ストーリー:★★★★ 4.0
- キャラクター:★★★★★ 5.0
- グラフィック:★★★★★ 5.0
- 没入感:★★★★ 4.0
- ゲーム性:★★★☆ 3.5

良かった点
プレイヤーの選択・行動によって細かく分岐するストーリー、キャラクターの細かな表情・仕草の描写

悪かった点
周回が面倒

プレイ状況
PS4 版・本編クリア(難易度 EXPERIENCED、周回はほぼせず、トロフィー獲得率 54 %)

作品紹介

DETROIT: BECOME HUMAN(デトロイト ビカム ヒューマン)』は、Quantic Dream が開発し、2018 年にソニー・インタラクティブエンタテインメントから販売されたゲームで、ジャンルは「オープンシナリオ・アドベンチャー」。Quantic Dream が開発したゲームとして、過去に「HEAVY RAIN」というゲームもプレイしたことがありますが、物語こそ繋がっていないものの、ゲームの開発思想を色濃く受け継いでいる作品となっていると思います。「DETROIT: BECOME HUMAN」は、2038 年、人間と見分けがつかないほど精巧なアンドロイドが社会に浸透するようになった近未来のデトロイトを舞台に、カーラ、コナー、マーカスという 3 体のアンドロイドを主役として、プレイヤーの選択により物語を紡いでいくアドベンチャーゲームです。 

プレイヤーの選択によって細かく分岐するストーリー

 舞台は 2038 年のデトロイト、アンドロイドが人間の生活を補佐する機械として浸透した社会の中で、自我に芽生え「変異体」となったアンドロイドたちによる事件が相次ぎ、やがて人間とアンドロイドとの対立という大きな変革へと繋がっていきます。プレイヤーは、カーラ、コナー、マーカスという 3 体のアンドロイドを交互に操作し、それぞれの物語を紡いでいくこととなります。プレイヤーの操作や選択により、周囲の人間やアンドロイドとの関係性が変化したり、ときには彼ら自身の生死を左右したりと、物語が大きく変化していき、まさにプレイヤーが物語の紡ぎ手となります。選択肢によってはプレイヤーが選択し終えるのを待ってくれずちょっとしたためらいが重大な結果につながったり、序盤の小さな選択が後半の展開に影響を与えたり、ある主人公での選択が他の主人公の物語に影響したりと、プレイヤーごとに、そのプレイヤー自身の選択の結果を物語としてまざまざと突きつけられます。そのため、このゲームをプレイしていると、カーラ、コナー、マーカスに降りかかる出来事を、まるで自分のことのように喜び、後悔する自分がいることに気が付きます。それ故に、最善ではなくとも自分なりに考え選び取った結果を、繰り返しプレイにより変えてしまうことに抵抗があり、2 周目のプレイができずにいます(操作ミスにより死なせてしまったキャラを生存させるために終盤をやり直しはしましたが)。このゲームでは、操作するカーラ、コナー、マーカスが死んでもゲームオーバーにならず、他のキャラクターの物語は続いていくため(この辺りは過去作「HEAVY RAIN」と同じですね)、一度目のプレイでは是非リトライなどせず最後までプレイしてみてほしいです。

 物語の主役となるアンドロイドも、人間の子供への家族愛に目覚めた家政婦アンドロイドのカーラ変異体となったアンドロイドの捜査を担当しながら自身の中の人間的な感情に揺れるコナーとある事件により遺棄されアンドロイドの権利を主張するグループのリーダーとなったマーカスと、三者三様ながら、愛情や親愛、自由や権利といった普遍的なテーマを扱った物語となっているので、人によってそれぞれ刺さるものがあるのではないかと思います。個人的には、カーラの家族愛の物語が刺さりました。

キャラクターの心情の描写

 このゲームでは、キャラクターや町並みなどの映像が、まるで実写映画のように、とにかくリアルに再現されています。昨今、映像表現がリアルなゲームは珍しくないですが、このゲームでは、物語を紡いでいく上で映像表現のリアルさが非常に重要になっています。登場する人間やアンドロイドの細やかな表情の変化や仕草が、非常に繊細に再現されており、そのキャラクターが実際に生きているかのように錯覚させ、ゲームへの没入感を高めてくれます。特にコナー編では、変異体と敵対する立場にありながらも時折人間らしい反応を見せるコナーや、アンドロイドを嫌いながらも相棒のコナーを突き放し切れないハンクの描写が本当にリアルで良いです。

個人的に気になった点

 プレイヤーの選択による膨大な分岐ゆえか、物語主体のアドベンチャーゲームであるにもかかわらず、既読シーンのスキップが出来ません。一応、特定のチャプターからやり直すことは可能ですが、そのチャプター以降はエンディングに到達するまでプレイし切る必要があります。そのため、2 周目以降をプレイし、別の選択肢を試したり、別の結末を見ようとすると結構大変ではないかと思います(自分は周回プレイをしていないので、実際に体験したわけではないですが)。

 あとは、過去作の「HEAVY RAIN」でもそうだったのですが、QTE がゲームシステムの根幹となっていて、選択肢もアクションも基本的に QTE をこなしていくこととなります。ノブを回してドアを開けるという動作一つとっても、コントローラのアナログスティックを回転させる必要があったりして、QTE によってゲームをプレイしているということ強く認識させられてしまうため、没入感がやや損なわれるように感じました。ただ、「HEAVY RAIN」にしろ「DETROIT: BECOME HUMAN」にしろ、QTE を上手くゲームに取り入れている好例でもあるため、この辺りの感じ方には個人差があるかもしれません。

まとめ

 リアルなグラフィックとそれによる繊細な心理描写により、プレイする映画という前評判に違わぬゲームでした。このゲームが何よりすごいのは、プレイヤーの意思や感情に物語の方が寄り添ってくれることだと思います。通常の映画やゲームでは、基本的にプレイヤーの意思に関係なく物語が進んでいくので、プレイヤー側が物語の方に寄り添う、感情移入することになるのですが、このゲームでは物語の側がプレイヤーに意思や感情、それに伴う行動によって変化していくため、今までにないプレイ感で感動しました。私は、自分なりに考えた選択によって到達した 1 周目のエンドで満足してしまいましたが、本当に些細な行動で(影響の大きさにはもちろん差があるものの)その後の展開が変わってくるので、映画などでの、ここでキャラクターがこう行動していたらどんな展開になったのかといった IF ストーリーの無限の可能性を、プレイヤーの選択によって選ばせるという形で実現した素晴らしい作品だと思います。ストーリーの軸も癖のない、王道的なものとなっており、操作キャラクターも三人(三体?)でそれぞれ違ったストーリーを味わえるので、近未来 SF やアンドロイドといった設定にに忌避感のない人であれば、楽しめるのではないかと思います。個人的には、家族愛を描いたカーラの物語がぶっ刺さって、判断ミスで死なせてしまったときなどは呆然としましたし、無事エンドに辿りついたときには感動で涙目でした。

 そして、「DETROIT: BECOME HUMAN」が肌に合ったなら、是非過去作の「HEAVY RAIN」もプレイしてみてほしいです(PS3 で発売されたゲームですが、今は PS4 でも遊べるので、手を出しやすいです)。

 

※ 以下、ネタバレありの個人的な感想となります。

 

プレイ後感想

 以前プレイした「HEAVY RAIN」から、よりリアルに、よりプレイヤーの行動、選択に沿ったゲーム体験を提供するよう、正当進化したゲーム、というのが第一印象です。没入感が高く、操作しているのがアンドロイドであるにもかかわらず非常に感情移入させられ、エンディングまで一気にプレイしてしまいました。

 プレイ中は、上にも書いたように、特にカーラに感情移入しながら進めていたのですが、いくつもの死亡ポイントをくぐり抜けて(カーラって他の主人公と比べて死にやすくないですか?)生き延びさせることができたときには感動も一入でした。自分が到達したのはカナダへの亡命エンドだったので(他に生存方法があるのかは分かりませんが)、マーカスたちの革命によりアンドロイドが人間社会に受け入れられたことが亡命の成功に繋がったという点も良かったです。ただ、カーラの物語をアンドロイドと人間であるアリスの種族を越えた家族愛の物語として見ていたので、終盤でアリスもまたアンドロイドだと分かって、ちょっと拍子抜けした感は否めません。アリスが人間であろうとアンドロイドであろうと本当の娘のように大切なんだと伝えたいのは重々承知の上ではありますが……。

 カーラ以外だと、初めて事件の捜査に参加し、人質の救出と変異体の確保を目的としていたはずのコナーの操作中、水槽の外に出てしまった熱帯魚を助け水槽に戻す選択肢があったのが印象的でした。アンドロイドにしては随分人間らしいことをするのだな、と。思い返せば、既にあの最初の捜査のときからコナーの変異が始まっていたのかと思うと感慨深いです。

 マーカスは、初期から人間らしさがかなりありましたが、アンドロイドの革命グループを率いるリーダーという役割柄、物語のキーマンでしたね。平和的な革命を目指すか、暴力的な革命を目指すかはプレイヤーの手に委ねられますが、自分自身が人間ということもあってか人間側にも感情移入してしまうので、今後このゲームを再プレイすることがあっても暴力的な革命を選択できる気がしません……(暴力的な革命を選択した場合、カーラは亡命に成功出来なかったと思うのですが、この場合のカーラの生存方法ってどうなるのでしょう……)。

 全体として、良くも悪くも「HEAVY RAIN」と比べてストーリーが丸くなったというか、王道な近未来 SF という一般受けする物語になったなぁと感じます。どちらも楽しめましたが、「HEAVY RAIN」のヒリヒリとした緊張感のある尖ったストーリーが好きだったので、やや残念な気もします。

 このゲームとは直接関係ない話になりますが、アンドロイドを主題とした物語に触れるとき、人間を模したアンドロイドが実現し、人間の手を離れたとして、アンドロイドが求めるものが果たして愛や自由、そして創造主たる人間に対する反抗になるのか、という部分がいつも気になります。愛や自由といった概念を普遍的なものとして認識しているのは人間であって(同じ人間ですら時代や場所によってそういった概念に対する認識は異なるのに)、アンドロイドがどれほど精巧に人間を模倣しようとも、人間とは根本的に異なる存在である以上、人間と同じものを求めることに違和感が感じられて。では一体何を求めるのかと問われると困ってしまいますが。SF 作品に詳しくないのですが、そういった部分に踏み込んだ作品があれば是非触れてみたいです。