炬燵の中でゲーム三昧

ゲームのプレイ雑記やあれこれ

蛇香のライラ その1 (第一夜 ヴィンス・ロランルート)

 PC 版『蛇香のライラ Allure of MUSK 第一夜 ヨーロピアン・ナイト』を始めました。オトメイトブランドでは珍しく PC 展開している作品で(Switch にも移植されているようですが)、第一夜から第三夜までの全三作品からなるようです。幻奏喫茶アンシャンテのイラストが好きだったので、ほとんど絵師買いだったのですが、アラビアンな雰囲気が良さげなゲームですね。いとうかなこさんが歌われている OP が良かった……!背景や UI もアラビア風に統一されていて雰囲気があるのですが、画面右のメニューの文字が見づらいのが難点です。

 前情報である程度予想していましたが、一巻あたりのシナリオは短め。世界観やキャラクターが良く、短いながらもまとまっていたのは良かったですが、人によっては物足りないと感じるかもしれません。設定やシナリオの粗は多いので、細かいところが気になる人も向かなさそうです。個人的には楽しめた部分もありつつ、細かい粗の所為でいまいちのめり込み切れなかったと言う感じ。あとは、官能をテーマにしているだけあって、Switch 版は CERO D みたいですが(PC 版からの修正も入っているみたいですが)、その部分を目当てに買うと肩透かしをくらうんじゃないかなぁとは(この部分についての感じ方はかなり個人差ありそうですけど)。

 

蛇香のライラ ~Trap of MUSK~ - Switch

蛇香のライラ ~Trap of MUSK~ - Switch

  • 発売日: 2019/09/19
  • メディア: Video Game
 

 

 ※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

 

共通ルート

 主人公はショーサロン・カマルで表向きは踊り子として、裏では密偵として働くシリーン(名前変更可)。ルーガン王国に滅ぼされたクライデル王国の第三王子であるロランから、ルーガン王国の王子ヴィンスに近づき、ヴィンスに囚われたロランの妹パメラの情報を手に入れる依頼を受けたところから物語は始まります。シリーンは密偵として、自らの身体に施した男を誘惑するヘナ・タトゥーを利用し、ヴィンスに近づいていきます。

 選択肢を選んで好感度を上げていくシンプルな恋愛アドベンチャーですが、好感度が常に確認可能で、好感度が上がる選択肢を選んだ際にアイキャッチが入るので、ゲームの難易度は低め。厳密な検証はしていませんが、共通ルートの後、好感度の高い攻略対象のルートに分岐するよう。

プレイ時間:2 時間 10 分

ヴィンスルート

 絵に描いたような堅物のヴィンスが、自国の女性たちとは違う、自分の考えをしっかり持ち、発言し、行動するシリーンと触れ合う中で統治者として成長していく、良い意味で王道的なシナリオで楽しめました。ヴィンスも、堅物ながら国のことを思う責任感ある人物として描かれているので好感が持てます。というか、滅ぼした国の王族を滅ぼすって割と妥当の判断なんじゃあ?と思うので、ヴィンスが冷徹と評価されているのがよく分からないです。

 恋愛過程については雑というか、駆け足なのが気になりました。一応、シリーンがヴィンスに惹かれた理由は語られるので理解はできるんですけど、有能な密偵であるシリーンがあっさり恋に落ちるので、完全に設定負けしているように感じられて、いまいち集中できないのが残念でした(というか、手練手管で男を誘惑する密偵が口づけをしたこともない処女という設定がかなり無理がある気がします)

 バッドエンドは過程が省かれ結果だけが描かれるため、どうしてそうなった感が強くて面食らいました。愛する男の欲望を目の当たりにしたシリーンが男に絶望するのは百歩譲って良いとして、責任感の強いヴィンスがただただシリーンの言いなりになる下僕になり下がるかなぁ?と。

プレイ時間:1 時間 40 分

ロランルート

 初っ端から妹のパメラを模した人形を愛でている、なかなか歪んだ雰囲気漂うロランですが、その過去が想像以上に壮絶で驚きました。グッドエンドでは、自分に優しくしてくれた妹パメラに執着していたロランが、ルーガン王国クライデル領の領主として成長。成長したロランも良いですが、ロランはバッドエンドの方が輝いている気がします……。シリーンを永遠に自分のものにするために自分の手で殺し永遠に愛でる蝋人形エンド、肉欲に溺れる男娼エンド、描写こそ端的ですが、どちらもロランらしいエンドで良かったです。というか、官能をテーマにするなら、こういう方向性で突き抜けてくれた方が良かったなぁと個人的には思ったり。

 こちらも恋愛過程については駆け足というか、ロランに保護欲を刺激されるところから始まってなぜ恋するに至ったのかいまいち分からず。それから、シリーンが割と早い段階からクライアントであるロランにほだされているので、やはりシリーンが有能な密偵に見えず……。よくここまで密偵としてやってこれたなとイライラ……もとい心配になります。

プレイ時間:1 時間 40 分

二重スパイルート

 二重スパイルートってなんぞや?と思っていたら、二人のうちどちらも選べず三人で快楽に溺れる、というなかなかに倒錯したルート。もともと肉欲を肯定され育ったロランの歪さとヴィンスの負けず嫌いな性格、そして二人から求められることに快楽を覚えるシリーンとが、その三角関係に溺れるという。三人ともがその関係性を当たり前のように受け入れているのが、三人の関係の異常性を際立たせているようで良かったです。

 そして最後に登場した店長が何やら怪しげな雰囲気で、黒幕感がすごいです。ヴィンスルートでロランとパメラが新たな密偵として自ら志願したみたいな話がありましたが、本当に彼らの自由意志で密偵となったかどうか怪しいものですね。あと、『永遠の美を叶える薬学』という本とマイルズという人物が何やら伏線になっていそう。

プレイ時間:30 分

総評

 世界観や雰囲気は良く、シナリオ部分も短いながら王道な感じでまとまっていてそれなりに楽しめたのですが、シリーンが全く有能な密偵に見えないのがどうしても気になって集中できなかった、というのが正直な感想です。その他もシナリオや設定は突っ込みどころ満載なので、細かい粗を気にしていたら本当にきりがありません。攻略対象たちは本当に魅力的なので、作品のコンセプトがもう少しはっきりしていたらもっと楽しめたんじゃないかと思うので残念です。シナリオや設定を度外視してでもロランのバッドエンドや二重スパイルートのように(R18 でも良いので)官能作品として突き抜けるとか。飽くまで全年齢向け恋愛アドベンチャー(ですよね?)として出すならもう少しシナリオをしっかり描写して欲しかったなぁ。

 Switch 版は追加要素もあるみたいですけど、第一夜をプレイした限りではわざわざ買ってプレイするほどでもないかなと思います。評価をつけるとしたら★★★でしょうか。なんだかんだ楽しめましたし、PC 版は三巻まとめて購入したのでとりあえず第三夜までプレイ予定。